「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」
政府は、2007年6月19日付で「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(1)(以下、「政府指針」といいます。)を公表しました。政府指針は、その中で、「反社会的勢力が取引先や株主となって、不当要求を行う場合の被害を防止するため、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入するとともに、可能な範囲内で自社株の取引状況を確認する」ことを、反社会的勢力による被害を防止するための平素からの対応のひとつとして掲げています。
なお、首相官邸の犯罪対策閣僚会議決定等のページにおいて、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(PDFファイル)を参照できます。
金融庁の監督指針
また、2008年3月には、金融庁は、金融機関等に対する監督指針の一部(2)を改正しました。
これらの監督指針は、それぞれ、「反社会的勢力との取引を未然に防止するための適切な事前審査の実施や必要に応じて契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入するなど、反社会的勢力が取引先となることを防止すること」を、反社会的勢力との関係を遮断するための態勢整備の検証における留意点の例として掲げています。
金融機関等における暴力団排除条項の導入
政府指針や上記の金融庁の監督指針を受けて、全国銀行協会が暴力団排除条項の参考例を公表(3)するなど、金融機関を中心に暴力団排除条項の導入が進んでいると考えられます。
そして、金融機関等における反社会的勢力との関係遮断の態勢が整うにつれて、事業会社等の企業においても、反社会的勢力とつながりが深いことが融資を受けられない等の重大な不利益に直結することとなり得ますので、暴力団排除条項の導入の動きは、この点からもさらに拡大する可能性があるといえます。
暴力団排除条項
なお、暴力団排除条項を規定する場合には、具体的には、契約の相手方に、?自らが反社会的勢力でないことについて表明及び保証させる、?契約締結後に反社会的勢力に所属しないことを誓約させる、?反社会的勢力に該当する場合を契約解除事由として規定する、等の方法を複合的に用いることになると考えられます。
また、政府指針においては、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。」とされており、上記の「反社会的勢力」か否かという属性に関する条項に加えて、暴力的要求行為等の「行為」に着目した条項も併せて規定するとよいでしょう。
(追記)その他の暴力団排除条項の参考例
上記の他にも、2010年3月18日には、社団法人信託協会が、及び2010年4月22日には、社団法人日本建設業団体連合会が、それぞれ暴力団排除条項の参考例の策定について公表し、その一部がウェブサイト上で公表されています。
社団法人信託協会の公表する参考例については、ウェブサイト上では、指定金銭信託約款に係る暴力団排除条項の参考例(PDFファイル)のみを参照することができます。なお、社団法人日本建設業団体連合会の参考例については、リンクが制限されているため、ここでは参照しません。
建設業に関する事業団体により暴力団排除条項の参考例が策定されるなど、今後も各業界で暴力団排除条項導入の動きが広がっていくと考えられます。