契約書の原本と写しとの相違
契約で合意された内容を後日に参照するという観点からは、契約書の原本を保有する場合と契約書の写しを保有する場合とに相違はありません。
契約書の原本を保有する意味は、紛争等の事由により当該契約書に記載されている内容を証明することが必要となった場合に、原本の方が写しよりも一般に高い証明力(1)を有するという点にあります。
契約書が印紙税法上の課税文書に該当する場合
しかし、契約当事者の数だけ契約書の原本を作成することが常に最良の選択肢とは限りません。
例えば、契約書が印紙税法上の課税文書に該当する場合には、すべての原本に対して印紙税が課税されることとなりますので、特に印紙税額が高額となる事例では、契約書の原本の通数を多いと多額の印紙税が課される結果となり、この点は経済的に大きなデメリットとなります。
一部の契約当事者が原本を保有しないその他の場合
契約書が印紙税法上の課税文書に該当しない場合でも、すべての契約当事者が原本を保有しないこともあります。
例えば、シンジケートローン契約のように多数の金融機関が貸付人として契約当事者となる一方で、日常的な貸付に関する事務を行う金融機関がエージェントとしての立場でも契約当事者となっている場合などには、エージェントのみが原本を保有し、貸付人としての立場のみで契約当事者となっている参加金融機関については、契約書の写しのみを受領することとされる場合があります。